chapter3-side A:wav編集
この項では「音の編集」について解説します。
音いじり入門
譜面を作っていて、叩かせたい音が出てきたけど、そのまま叩かせるのは難しそうな場合もありますよね。
たとえば、打感が薄い・音が埋もれている気がする・音の切られ方がイメージと合わない……などなど。
そんなときは譜面に合わせて音をいじってしまうという手もあります。大丈夫。ほんのちょっとだけです!
レベル2では、譜面イメージを音に合わせるのが課題でした。
(叩かせるのを諦める・打感の薄さは妥協する)
レベル3では、譜面イメージに音を合わせるのが課題です!
(打感を鍛える・音を浮かせる・切り方を変える)
▼レベル0:準備 | ▼レベル1:減質 | ▼レベル2:切貼 | ▼レベル3:加工 |
---|---|---|---|
ソフトの導入 | wave | 複音化 | エフェクト分類 |
音の基本要素 | ogg | 音切り | エフェクト補足 |
◆wave 編集ソフトを導入しよう!
WavePaseri | 音加工の経験がない方に、筆者が個人的におすすめしたいのがこちら。 操作が超わかりやすいです! PCと英語が不自由な筆者にも使える! まずはこのフリーウェアで自由に遊んでみてください!!! |
SoundEngine | 音編集に慣れてきたら、こちらのフリーウェアもかなり遊べると思います。 日本語で、かつフリーの音編集ソフトとしては、最高峰の機能を誇ります。 エフェクトのプリセットでてきとうに遊んでるだけでも超おもしろいですよ! |
GoldWave | 英語のシェアウェア、やや上級者向け? フリーのままでも使えます。 最新版は超高性能です! 音域とか普通に見え放題、いじり放題。 性能はやや劣りますが、旧版 v4.26 には 日本語化パッチ もあり安心。 |
その他 | もちろん、音加工ができるソフトは他にもたくさんあります。 作曲ソフトや VST プラグイン などを利用する手もあります。 FL とか。 慣れれば用途によって様々なソフトを使い分けられるようになると思います。 ようは遊ぶが勝ちです! 他のソフトで遊びたくなったら探してみましょう。 |
◆音をいじる前に
必ず元の bms フォルダをコピーして、バックアップを残しておきましょう。
こうすれば失敗しても簡単に元に戻せるので、いろいろなエフェクトを気軽に試して遊べます。
◆遊びかたの例
※のちほど追記 画像も
WAVE
音とは波です。あらゆる音声は波の形として表現できます。 つまり音の編集=波の形の変形です。
波形情報をデジタルデータ化した音声ファイルのうち、最も基本的な形式が wave です。拡張子 【 .wav 】
mp3 や ogg などの音声ファイルと比較すると、最高音質 ・ 最大容量 ・ 加工しやすさ が特徴です。
bms で鳴らす音も、おおむね wave によって成立しています。 まずは wave について知っておきましょう。
◆wave の基本要素
音の長さ | 時間単位(秒)で表すか、もしくはサンプル単位(波形のデコボコの数) 長い音ほど大容量。長すぎる音はズレやすい。 スペックや環境にもよるけど、てきとうに切り分けるとよさげ。 |
サンプルレート 【 Hz 】 ※波の形の "ヨコ" の細かさ |
44100Hz (略記 44kHz、44k ) 22050Hz ( 22kHz、22k ) 11025Hz ( 11kHz、11k ) 数が倍なら : 容量も音質も倍。 高音を多く含む音は、44k でないとキレイに再現できない。 他のレートもあるけど、扱いが難しいので慣れるまでは放置。 |
ビットレート 【 bit 】 ※波の形の "タテ" の細かさ |
16bit 8bit 数が倍なら : 容量も音質も倍。 8bit は圧縮率が高いけど、ノイズが目立つことも多い。 他のレートもあるけど、bms には関係ないのでガン無視。 |
チャンネル 【 ch 】 |
2ch (ステレオ) 1ch (モノラル) ステレオは容量が倍になり、 "左右" の概念を持つ。 |
容量 = 音質 =【 長さ × Hz × bit × ch 】
※ここでいう音質とは、波形を構成する情報の量
[44k 16bit 2ch]の音を[11k 8bit 1ch]に下げると、容量・音質は 1 / 16 になります。
[11k 8bit 1ch]の音を[44k 16bit 2ch]に上げても、聴こえ方は[11k 8bit 1ch]のまま容量16倍。
いったん失われた音質は元に戻りません!この点はくれぐれも気をつけましょう。
音いじり -レベル1-
作品の容量を軽減させる工程を 減質 といいます。 音質を下げることによって容量を軽くします。
利点……配布しやすくなる。低スペックでも軽快に再生しやすくなる。 HDD を圧迫しない。
欠点……減質作業は手間がかかる。 音質が低下する。 後から音をいじりにくくなる。
なるべく劣化が目立たない範囲でレートを下げるのが基本ですが、エフェクト感覚で減質を利用する場合も。
環境によってはレートを下げた音を再生すると、一部の音がズレたり鳴らなかったりする場合があるようです。
そのときは こちら の方法などを試してみてください。
それでも改善されなければ…HQ版を集めましょう (;_;)
あなたのお気に入りの bms 作品を減質してみよう!
音いじりの経験がない方に、筆者がおすすめしてみたいプレイです。減質をやってみると、音の基本要素 というのが実際どういうものなのかがものすごくよく分かります。自分の耳で HQ版 を減質して聴き比べてみたり、個々の波形をじっくり見比べてみたり、作者さんご自身が減質されたバージョンと聴き比べてみたり、そしてへこんでみたり、そうやって色々な角度から bms 作品を攻略してみるというのも、とても面白いですよ!作家さんの技術とセンスと労力と情熱、そして作品そのものに、あらためてうたれることでしょう。
あるいは 「これなら自分でもできるかも?」 と思えてくるかもしれません。できるんです!
◆wave の減質
音の基本要素 をいじって、容量を下げていきます。
レートダウンしても単音での聴こえ方がほとんど変わらない要素は、ガンガン下げちゃっても大丈夫です。
単音で聴くと劣化が目立っても、全部の音がいっせいに鳴ったときには劣化が気にならない場合もあります。
逆に、混ざったときに劣化が目立ってくることもあります。 余韻を切りすぎて全体の空気感が失われたり、
44k を 22k に下げまくったら高音域の粒が粗くなって貧相な響きになったりします。 さじ加減が悩みどころ。
叩かせる予定のない長音が複数同時に鳴っているときは、それらをひとつの wave にまとめてしまったほうが、
容量が抑えられる場合もあります。(抑えられない場合もあります。)
これの極端なものを1本wav といいます。1本の長い wave ファイルに BGM すべてをまとめる手法です。
【利点】音切りやミキシングの手間が省ける。微妙な発音時ノイズ・発音遅延を軽減できる。
【欠点】容量が大きくなる。低スペック環境だと音ズレやすい。差分が作りにくい。
ogg が普及すればメジャーな手法になりうる可能性もありますが、いまのところ 1本wav は嫌われています。
複数の音がまとめ録りされているときは、それらを細かく切って、使いまわせるパーツは使いまわすようにすると、容量が抑えられる場合もあります。 (抑えられない場合もあります。)
例えば「べっべっべっべっべーーべーーべー」とワンフレーズまとめられて1小節ごとループしているなら、
そのフレーズを「べっ」 と 「べーー」 と 「べー」 の3種類のピースに切り分けてうまく使いまわせば、
容量は元の半分以下で済みます。(音量とかが違ってたりして使いまわせない場合は、この限りではないです)
一種のパズルゲームだと思えばいいんじゃないかな!
効率よく減質を行ううえで、心強い味方となるソフトを紹介します。
SCMPX | 複数の wave ファイルを一括減質できます。 たいへん便利です! 【CONVERT ⇒ Multipul files ⇒ Resample】 でメニューを開き、 wave をまとめてドラッグし、レートを設定して変換します。 (パートごとに減質を行っていくと、効率がよいかもしれません。) |
Flexible Renamer | 複数のファイルの名前を一括で変更 (リネーム) できます。 たいへん便利! 【SCMPX で減質 ⇒ ファイル名から 【 _rs 】 を全削除 ⇒ すべて上書き】 【そのへんから拾ってきたエロ画像群の無秩序なファイル名をあとから整理】 【差分wav のファイル名の先頭にイニシャルを一括挿入 】 とか、色々できます。 |
PCM-MeXimizer | wave ファイルの圧縮率を大幅に高めることができます。 できますがしかし 音によっては著しく劣化するケースも多いため、一括処理はとても危険です。 便利は便利なんですが、これは根気に自信がある方だけにおすすめします。 |
Padie | 複数の bmp ファイルを一括減色できます。 たいへん便利です。 bmp は使用色数によって容量や圧縮率が大幅に変動するため、減色は重要。 |
Capture STAFF | 減色した bmp をこれで RLE圧縮 すると、さらに容量が減らせます。 (減らない場合もあるけど、そのへんの判断は自動でやってくれます。) 拡張子が 【.rle】 に変わったら、リネーマー で 【.bmp】 に置換します。 ※RLE圧縮BMPに未対応の本体があるかも。 Win系ほぼOK、Mac未検証。 |
Thumbs.db
Windows XP エクスプローラでファイルを縮小表示にすると、縮小画像のキャッシュが自動生成されます。
サムネイルデータベース? システムファイルを表示させる設定にすれば、たまに見つかります。
これは bms や差分の配布時にはまったく不要なファイルなので、必ず消してから圧縮しましょう。
ogg
ogg とは
高音質・低容量、夢のような音声ファイル形式です。
音質は wave に若干劣りますが、ほとんど気になりません。
wav を ogg に一括変換するだけで容量が大きく減るので、従来の wav に比べて減質の手間が大幅に省けます。
対応する再生本体も続々登場し、いまや bms シーンでは wave にとってかわる勢いで普及しはじめています。
070401 現時点での ogg 対応本体 :
DDR / ふぃーりんぐぽみゅせかんど / ナナシグルーヴ / LunaticRave
注意点
bms における ogg はあくまで減質用です。
音加工の用途には向きません! 波形編集は wave で行いましょう。
bms 再生本体で ogg を再生する際には、音をメモリに読み込む都合上、それなりのマシンパワーが必要です。
現時点では ogg 未対応の本体も多いため、ogg の使用はすくなからずプレイヤーを限定することになります。
wave を ogg に変換すると、その時点で音質がやや失われます。 失われた音質は元に戻りません。
wave ⇒ ogg / ogg ⇒ wave のフォーマット変換
追加音差分で容量があまりにも大きくなったら、wav を ogg に変換して減量する手もあります。
圧縮後7MB の差分も、ogg なら圧縮後 270KB ~ 4MB まで減ります。(変換時の音質設定による)
bms シーンでスタンダードと思われる変換ソフト :
oggdropXPd (日本語化パッチ / 導入解説) / Lilith
◆ogg 使用作品の差分譜面を作る場合
▼ バージョン 1.4.0 以降の uBMplay をビューワに使いましょう!
▼ Directshow Filters for Ogg Vorbis, Speex, Theora, FLAC, and WebM
これを導入すれば、BMSE でも ogg が単音プレビューできるようになります。
その場合、定義リストは #WAVxx ___.ogg と指定します。(テキスト置換が簡単です)
ただし、この方法は BMSE のサポート対象外です。 導入は必ず自己責任でお願いします。
▼ 最終的な定義リストの状態は
#WAVxx ____.wav でも、#WAVxx ____.ogg でも、どちらでも構いません。
ogg に対応している本体なら、ファイル名さえ正しく指定してあれば、拡張子は自動で識別してくれます。
つまり、wav を ogg に変換しただけの場合、wav版 の譜面は ogg版 にもそのまま使えます。
▼ 追加音差分を作る場合
作品が ogg版 のみの場合は、ogg をいったん wave に変換する必要があります。
wav 高音質版 が存在する作品なら、そちらの音を利用したほうが確実かもしれません。
音いじり -レベル2-
ここからは、いよいよ音を切ったりくっつけたりします!
音を切ったりくっつけたりして、「オブジェ = 音のまとまりの単位」 を直接的に変えてしまうわけです。
譜面の観点からみると、グルーヴの解像度を "拡大 ・ 縮小" する工程・・・といえそうです。
この レベル2 をマスターすると、作れる譜面の幅が飛躍的に広がります。極端な話、曲があって、音がパートごとに大雑把に分けてあれば、それだけでもう譜面が作れるようになります。
◆複音オブジェ(複音化、wave結合、再結合)
・細かく切られた複数の音を、ひとつのオブジェで鳴らすようにまとめる手法。
・おもに、低難度化や叩きのグルーヴ目的で使用されます。
・音をまとめればまとめるほど、オブジェ1個あたりの演奏上の比重が上がります。(=ミスると痛い)
・オブジェ1個のなかに細かいリズムのグルーヴを含むため、独特の演奏感を味わえます。
・やりすぎると自然な演奏感が失われる危険性があります。
複音オブジェには、大別すると2種類の使われ方があります。
① 同じタイミングで鳴る複数の音をまとめる
例.[ Ether Dive / Umber Green ] SP譜面の後半のベース。 (DPはベースとブレビが別録り)
◆ つくりかた
1.まとめたい音を、wave編集ソフトでミックス。(WavePaseri画像例)
2.まとめた音を、譜面エディタで定義して配置。
② 違うタイミングで鳴る複数の音をまとめる
メインフレーズの16分乱打などを、いくつかのブロックでノリよく分けて叩かせる。
ドラムロールをオブジェ1個で鳴らす。 などなど。 (例1 例2 例3)←音リンク
◆ つくりかた
1.まとめたいシーケンスを、BMSE上でパート単体で並べる。(曲の頭に空小節を追加して並べるとラクです)
2.譜面をいったん保存。
3.保存した譜面を bme2wav につっこんで、[44k 16bit 2ch] の1本wav に出力。
4.それを切ったり加工したり減質したりして、オブジェとしての体裁を整える。
5.まとめた音を、譜面エディタで定義して配置。
【※注意】
32k や 48k などのレートの音が使われている譜面は、bme2wav だと正しく変換できない場合があります。
bms フォルダ内に存在しない音が定義されている譜面も、変換しようとするとエラーが出る場合があります。
多重定義を多用した譜面も、ごくまれに怪しいです。
上手くまとめられない場合は音編集ソフトを使いましょう。
③ ①+②
オブジェをどんどん重くしてやろうという発想です。
フィルター地帯を1本wav にしてブツ切って叩かせたり、意外とけっこう応用例も多いです。
うまくいかないと、たぶん何を叩いているのか分からなくなると思います。でもやってみたいですね!
◆音切り(断片化、裁断、スライス)
・まとめ録りされた音を、細かく切ってたくさんのオブジェにバラす手法。
・おもに、高難度化 ・ 叩きのグルーヴ目的で使用されます。
・切れば切るほど、オブジェ1個あたりの演奏上の比重が下がります。(=ミスしてもあまり痛くない)
・ノリを最大限に引き出せる切り方ができれば、えもいわれぬグルーヴ感が味わえます。
・やりすぎるとオブジェ密度がフラットになって、曲のノリや譜面の特徴が失われる危険性があります。
音切りには、大別すると2種類の使われ方があります。
① 同じタイミングで鳴る複数の音を選り分ける → 無理
これは音をバラした状態で録り直すか、もしくは作者さんにその旨お願いしたほうが早いと思われます。
「ベース+ハット」のように帯域が分かれた音どうしの合成音ならEQ等を駆使して強引に分離できますが、
シンセの「ド+ミ+ソ」のような和音のかたまりみたいな音を綺麗に分けるのは差分屋には至難の業です。
適切な音を他から探して代用する・無音オブジェを置いてごまかす・音量極小の foon.wav を置いておちょくるといった対処例を見たこともありますが、いずれも苦しさが拭えない感じです。
※最後のはそもそも対処じゃない
【アリだと思わされた例】
[ 幸せについて (LN edit ) / O-SE / obj.drop ] # 182 - #183 の同時押し。
「オクターブでテンションアップ!」 な感じを表現したものと思われます。
無音はアウトでもベースならむしろ素敵。単に筆者がベース厨だからとかいう話ではなくてですね!
説得力しだいで何でもアリじゃないかなっていうね!
② 違うタイミングで鳴る複数の音を切り分ける
音切りといえば、通常はこのケースです。 まとめてあるフレーズやループを切るタイプ。
ブツ切り
魚をまな板に載せて包丁でぶったぎるごとく、波形をそのままブツンブツンぶったぎっていく手法。
消えぎわだの余韻だの、面倒なことはな~~~~んにも気にせず大雑把にちぎってしまいます。
演奏するタイミングがほんのわずか狂っても音が途切れたりするので、ブツ切りっぱなしは嫌われるようです。
でもブツ切りのままのほうが、叩いていて気持ちよい音もあります! つまりケースバイケースです。雑な音切りが予期せぬ効果をもたらして "味" が出ることもあるようです。 ※雑に切れという意味ではありません
もし丁寧さを求めるなら、切ったパートを BMSE に配置した後、単体で鳴らして鳴り方を確認してみましょう。
ざっと聴いて変に聴こえたら必ずどこかで切り方がおかしくなってます。特定して潰すと仕上がりが丁寧。
アタックで切る
波形が極端にタテの方向に振れる箇所 (音の出だしの瞬間) を探して、そこを基点に切っていく手法。
アタックを検出して自動裁断する機能、それに似た結果が得られる機能、を持つ音編集ソフトもあります。BPM に対してアタックが整然と並んでいる (リズムがクォンタイズされている) 場合は難なく切れますが、そうなっていないもの、たとえば 生ラップ ・ ごく微妙なスイング ・ モタるリズム などの場合は切ったあとの音をオブジェとして配置するのがやや面倒になります。(微ズレ配置になるため)
微ズレになるオブジェを配置する際は、「切った後の音」 と 「切る前の音」 を BMSE 上で同時発音させて、
uBMplay でスロー再生すると合わせやすいかもしれません。 場合によっては 1/192 のズレも特定できます。
(そこまで神経質にやる必要はたぶんないというか、聴いて変じゃなきゃOKです。波形をちょっと削るとか)
非ブツ切り
ブツ切った後の音断片に、残響や遅延や "やまびこ" などのエフェクトをかけて、余韻 をプラスする手法。
或いはブツ切りよりも「やや前後長めに」波形を切って、オブジェ同士をフェードで繋げる手法。(図
譜面に 楽器演奏シミュレータ としての性質を強く帯びさせたいとき、などに使われます。
たとえば、まとめ録りされたピアノやストリングスなどをブツ切って、長めに余韻をかけてみるとしましょう。
すると、叩くタイミングが多少ズレてもキー音が途切れずに鳴る ⇒ 自然な演奏に聴こえる!というわけです。
本来は録音の時点で余韻まで含めて切るのが「丁寧な仕事」だとされていますが、これもケースバイケース。
後から差分を作る時に、まとめ録りされたパートを切るような場合もあるので、覚えておいて損はありません。
ただ、余韻系のエフェクトは他に比べて扱いが少し難しいです。 重点的に遊んで慣れておくと良いでしょう。
◆レベル2攻略のコツ
音符の目安を算出
【 60 ÷ BPM = 4分音符の長さ 】
BPM (Beat Per Minute) は、4分音符が 「1分間で何回鳴るか」 を指しています。 したがって、
BPM 100 なら、4分音符1個あたりの長さは、60 秒 / 100 回 = 0.6 秒。
(=8分は 0.3 秒、16分は 0.15 秒)
BPM 120 なら、4分音符1個あたりの長さは、60 秒 / 120 回 = 0.5 秒。
(=8分は 0.25 秒、16分は 0.125 秒)
このように、BPM からだいたいの目安を割り出せます。 (※)
目安で合わせる切りかたに慣れてくると、波形を見るだけでも(いっさい聴かずに)ガンガン切っていけます。
ブツ切りの場合は、アタックを気にしすぎず一定間隔で切ったほうが、むしろ綺麗に切れる場合もあります。
bme2wav でうまく複音化できなかった場合でも、目安さえ分かれば音編集ソフトで簡単に複音化できます。
【※注意】
うまく割り切れない時もあるので、だいたいでOKです。というか "だいたい" の方がいいかもしれません。
なぜなら目安を信用しすぎても、譜面に配置した時にズレる場合があるからです。それでは意味がありません。
ファイル容量も目安
容量は音の長さでも決まるので、同レートの音を一定間隔でブツ切っていくときは目安にできます。BPM 111 で 44k 16bit 2ch なら、16分音符はすべて 24 KB 前後になる、とか。だいたいでOKです。1個だけ 28 KB とかになってたら、そこは雑になっちゃったってことだから切り直す! とかですね。てきとうに。
フェード重要
ブツ切った音を BMSE に並べて単体再生してみると、プチノイズ(ぷちぷちいうノイズ)が聴こえることがあります。原因はいろいろ考えられますが、よほど切りかたがまずくない限り、フェードをかければたいてい解決できます。
◆波形の頭から 0.01 ~ 0.001 秒ほどの範囲にフェードイン
◆波形の尻から 0.01 ~ 0.001 秒ほどの範囲にフェードアウト
かける範囲はものすごく短くても大丈夫です。というかブツ切りの場合は短いほどいいかもしれません。
目立つノイズだけ潰せれば最低限大丈夫なので、神経質に全部にフェードかけなくてもだいたいでOKです。
音いじり -レベル3-
ここからは、音の聴こえかたそのものを変化させるエフェクト を使います!
エフェクトをかけることによって、"叩けない音" を "叩ける音" に変えてしまおう! "目立たない音" は "目立つ音" に変えてしまおう! というなかなかにアグレッシブな発想です。
この レベル3 をマスターすると、もはやあらゆる譜面が自由自在に作れるようになります。
【※注意】
筆者はそんなインビンシブルな領域にはほど遠いので攻略法なんか知りません!音そのものを変化させるということは、譜面そのもの、ひいては曲そのものを変化させるということですから、どうしてもエゴい話にならざるをえません。そもそも差分屋がそんなことやってよいのかどうかも分かりません。なので、この レベル3 に関しては今まで以上に割り引いて読んでくださるとありがたいです。
◆最低限
これだけ使えれば、差分はとりあえず大丈夫! だといいですね (
パン | 音の鳴る位置を、左右にずらしたりします。別項 も参照。 | DP、一部SP |
ボリューム | 選択した範囲の音量を、上げたり下げたりします。 | キー用オブジェ |
フェードイン | 選択した範囲の音量を、ゼロから徐々に上げていきます。 | 音を切るときに |
フェードアウト | 選択した範囲の音量を、ゼロまで徐々に下げていきます。 | 音を切るときに |
◆エフェクトとミックス
基本的には、目的の音を目立たせるために エフェクトが使われます。たとえばキー音を目立たせたいなら、
単純にいえば キー音を強めるか、BGM を弱めるか すればよいわけです。
音の全体的な鳴り方のバランスを決める調整の工程を ミックス というそうです。
一般的な音楽では、【きれいに混ぜる / 余分を削る】 という考え方が基本なんだそうです。
この考え方そのものは、bms にもものすごく応用できると思います。
音楽として "なじんで" いると、(それはミックスが巧みということですから素晴らしいことなのですが、)
bms として遊んだときに 「自然すぎて演奏感がない!」 なんてことになるかもしれません。
bms には 【bms なりのミックス】 がありうるのではないかと思います。
例えば キー音と BGM がハッキリ区別できるバランス の方が叩いたときには楽しいかもしれません。
このへんは人それぞれ考え方が異なる部分です。 一概に 「これが正解」 といえるバランスはありません。
なので、なんでもいいと思います (
全体的な音作りや鳴り方のバランスは、すでに元々の bms 作者さんが入念に調整しておられるわけです。
聴こえ方をちょっとでも変えた時点で、作者さんの意図した音楽とは別物になります。
追加音ありの差分は容量や導入の手間が増えるため、難色を示すプレイヤーさんもおられます。
エフェクトを使わずとも "配置" だけで解決することができれば、それが一番いいのかもしれません。
でも、やはり「音をちょっといじるだけで、譜面の可能性が広がる」っていうのはとても魅力的ですから、
作者さんの音楽と別物になることを踏まえたうえでなら、音をいじってみるのも面白いんじゃないかな?!
追加音のファイル名
差分に最低限のマナーがあるとすれば、それは 作者さんが意図した音ではないこと を明確に示すことです。
分かりやすく管理しやすい名前をつけて、作者さんの作られた音とハッキリ区別するのが望ましいと思います。
「追加音すべての名前の先頭に、差分製作者のイニシャルを含める」という命名法が筆者のおすすめです。
これならファイル名が他の差分と被る事もないし、「どこまでがその差分の意図なのか」 も分かりやすいです。
まあ区別できれば何でもよいのですが、元ファイルを上書きする名前だけは絶対にやめましょう。
ちなみに、ファイルの名前は BMSE の定義リスト上から直接変更できます。 (選択 ⇒ 右クリック)
もちろん、リネーマー もとても便利です。ファイルを名前順に並べたときにキレイに整列するように、パートごとに連番で統一すると管理しやすいです。
そのようにしておくと、定義リストにファイルをまとめて放り込んでもキレイに並ぶので、編集もしやすいです。
◆エフェクト分類
様々な種類のエフェクトが複雑に絡み合って、最終的な鳴り方に作用しています。クロスワードパズル状態。
複雑すぎて筆者にはさっぱり分からないので、ひとくちに説明する事はできません。なので説明しません!
エフェクトの具体的な効果は、SoundEngine のエフェクトのプリセットで遊んでみれば分かりやすいかも?
検索すると専門的な解説サイトも大量にヒットします。詳しく知りたい方はそちらを参照してみて下さい。
ここから下は完全におまけです!
簡単に分類だけしておきます。 ※筆者は素人そのものです! 痛烈なつっこみをお待ちしてます!
音量系 | ボリューム(音量) ノーマライズ(最大化) コンプレッサー(音圧)など |
キー音を大きくしたりBGM を小さくしたりします。 |
定位系 | パン(左右) サラウンド(立体感) コーラス(合奏感)など |
音の鳴る位置を変えたり音を真ん中から逃がしたり ステレオ感を演出したりします。 |
音域系 | イコライザー(音域ごとの音量調整) エキサイター(高域や倍音をプラス) フィルター (特定の音域をカット) |
音を前に出したり奥にひっこめたり 低中高をハッキリ分けて抜けをよくしたり 音色づくりや音域変化演出に使います。 |
余韻系 | リバーヴ(残響) ディレイ(遅延) エコー(やまびこ)など |
音のリリース(消えぎわ)をかっこよく演出したり 空間の広がりを感じさせたりします。 |
その他 | フランジャー(うねる) ディストーション(ひずむ) タイムストレッチ(尺の伸縮)など |
あんまり知りませんが たぶん他にもいっぱいあると思います。 音色づくり、尺やピッチの調整、etc |
◆エフェクト補足 ・ ピンとこない方へ
音圧 ⇒ 波の形をイメージしてみるとよいですよ。
波形のまばらなデコボコを、つぶしてならすエフェクトがコンプレッサーです。
コンプをかけると、波形のデコボコの上下の振れ幅が 「均一の状態」 に近づきます。
上下がギュッとつぶされて、ギザギザの密度が上がり、その結果 同じ音量でも音量感が増します。
つぶしてから音量を元に戻せば、つぶす前の音より 「なんとなく大きく聴こえる!」 というわけです。
圧縮されるぶん波の形そのものが変わるため、音によっては聴こえ方がまるっきり変わる場合もあります。
その効果を音色作りに利用するケースもありますが、差分の場合はそこまで考える必要はなさそうです。
つぶしすぎると聴いててつらかったりしますけど、筆者は打鍵感さえ味わえれば何でもいい人です><
音域 ⇒ スペクトラム・アナライザーを見てみましょう。
たとえば GoldWave 最新版 などで音をプレビューしてみると、音域が "見える" ので分かりやすいですよ。
ほとんどの音は、聴こえるか聴こえないかレベルでは 下から上までだいたいの高さの音を含んでいます。
その高さの成分を音域といいます。
音域ごとに細かく音量を調節するエフェクトが イコライザー【EQ】です。
特定音域をカットして、他の音域を目立たせるのが フィルター です。ろ過する音域を徐々に変えたりします。
聴こえやすい音は中音域を多く含む為、そこをちょっと削ると音楽的なバランスがよくなる事が多いようです。
しかし 中~高域 は打感に大きく影響する成分なので、危険を承知であえて強める場合もあります。
(※これに限らず、音の編集は すべからくケースバイケースで対処すべき ということがいえると思います)
キー音が埋もれているように感じられる場合、キーと BGM で音域がかぶっているのかもしれません。
キー音と BGM の音域をバランスよく散らすことができれば、音の抜けがよくなって、演奏感が増すかも?
音割れ ⇒ 波の形の 「上下のてっぺん」 のあたりに注目。
たとえば SoundEngine などで音をプレビューしてみると、割れている場合は 【Clip】 と出てきます。(図
波形が限界を超えて上下に振り切れると、なんだか「ブツッ」とノイズが入った聴こえ方になってしまいます。
これが「音が割れた状態」です。 こうなるとあんまり耳によくありません。 音楽にも影響を及ぼします。
音が割れると、その時点で波の形そのものが変わってしまいます。 ということはつまり、
いったん割れた音は、そのまま音量を下げてもクリップノイズは消えません!
音が割れない範囲で音量だけを最大限に稼ぎたい場合は、ノーマライズ を使いましょう。
(ノーマライズも波の形が微妙に変わるらしいけど、bms で使うぶんには無視できるレベルかなと思います)
単音では割れていなくても、混ざると 「音量大きめな音」 同士がぶつかって割れる場合もあります。
また、高音質では割れていない音でも、レートを下げると割れる場合があります。(特にビットレート)
ステレオをモノラルにしたときも、音同士が真ん中でぶつかって割れてしまう場合もあります。
打感(高域強調)を狙ってわざと割る場合もありますが、筆者はそれやってうまくいったためしがありません;
前後 ⇒ 音の鳴り方に 「近さ」 や 「遠さ」 を感じることがありませんか?
「手前と奥」という距離感、奥行きの概念です。 遠近の感覚は、余韻や音域に大きく影響されるようです。
リバーヴやなにかで余韻まみれにすると、音を奥のほうに引っ込ませることができる場合もあります。
高域を下げたり低域周辺を上げたりすると、音がこもって奥に引っ込む場合もあります。
音を手前に出したいときはその逆で、エキサイターで高域を足したりEQで低域をカットしたりします。
レートを下げると高域が失われて音がくすみ、遠くで鳴っているように聴こえることもあります。
SoundEngine などのサラウンドまわりのエフェクトで、適したプリセットを探してみるのも面白いです。
定位 ⇒ 茶碗を持つほう <---> お箸を持つほう
ステレオの音は 左右 の概念を持ちます。 左に寄る音、右に寄る音、左右に動く音、などが表現できます。
wave 編集ソフトでステレオの音を見てみると、L と R で波の形が異なっていることが分かります。
左右の波形の 相対的な出力バランス を変えることで、"定位感" を演出しているわけです。
たとえば、モノラルの音をステレオに変えただけの状態では、聴こえ方はモノラルと変わりません。
この状態から 左の波形だけを弱めると、その音は相対的に右に寄って聴こえます。
音量そのままで音を左右に散らしただけだと、相対的に音量が小さく感じられることがよくあります。
そういうときは WavePaseri のパンエンベロープがおすすめ。(※envelope 極端に振りすぎると割れます)
左右の波形の発音タイミングをズラすことでも独特の効果が出せます。ズラす長さを変えるのも面白いですよ。
SoundEngine の 【空間 ⇒ チャンネルディレイ&定位 ⇒ Phase Width】 はズバリそういうエフェクトです。
(※これは必ず右の波形を先に鳴らします。 そのぶん左の音量を相対的に上げて、右を下げているようです)
GoldWave には、波形を LR反転 させるエフェクトもあります。筆者はDP差分で使いまくっております。
BGM がステレオ感たっぷりの場合、キー音はモノラルにするのも手です。(=中央に集まるので埋もれない)
逆に BGM がほとんどモノラルという状況であれば、キー音はたぶんステレオ感を出したほうが目立ちます。
つまり、こういうのが 「キー音と BGM との間に相対的な落差をつくる」 という考え方です。
しかし行き過ぎた 【 bms 優先主義】 は、音楽を優先する考え方とは相容れない場合も多いです。
音楽性と bms 性は、しばしば対立します。
たとえば曲のリズムを支える低音楽器は、パンを振らず真ん中に置くのが一般的です。 根拠もあります。
でも 「1鍵盤でキックを叩かせるなら、ほんのり左に寄せたほうが演奏感が強まるかも?」
っていうのも、音を演奏させるゲームとしてはそれなりに筋が通った考え方かもしれません。
さて、みなさんならどうしますか!!?
◆遊びかたの例2
※のちほど追記
続いてテキスト編集について紹介します